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心身症

心身症とはいわゆる心の病と言われ、心の病は心を持つ心身症と認定されていない我々も基本的に心身症になる資質を持っています。心身症は心を持つ誰もがなりうる病気です。心身症とはウィルスが原因でなる風邪などの病気とも違い、心身症か?心身症ではないか?の線引きは非常に難しく、医師やカウンセラーによって見解が相違するものです。ただ、美術指導を行う我々が先生として大切にしなければならないことは、常日頃から細心の注意を払って個々の生徒の心の乱れを敏感に察知することです。そのため指導では乱れを察知した場合、なんとか安定させる手立てを考えて、あの手この手をこうじます。
デッサンではほんの少し気持ちが乱れただけで形が違ったり、色が濃すぎたり、薄すぎたりします。デッサンの制作では一糸乱れぬ緊張感を制作開始~終了まで持続できた人はバランスのとれた作品を描き上げることができます。わかりやすい状況としては縫い針の穴に縫い糸を通す作業を制作時間中続ける場面をイメージしてもらうと良いかもしれません。糸が穴に通らない状況が形が違ったという状況です。

心の状況を気にすることなく、実技の指導が楽に、スムーズにいく場合があります。東京芸術大学の合格レべルまでスッと上って行く生徒への指導です。そういった生徒は癖がまったくなく、心が乱れず、常に情緒が安定し顔色ひとつ変わることなく大学に合格していきます。こういった生徒は美術予備校入学時に美術は初心者であっても他の何かで、例えば勉強で東大に合格する学力がありながらも東京芸術大学に志望校を切り替えた人やスポーツで全国大会の優勝経験があるなどの精神的な鍛錬を、どこかで積んでいます。言うなれば情緒の安定は精神の鍛錬ではかることができます。その点は心身症の生徒の指導にも効果を発揮し、心身症の治療というには大げさですが、今までの経験から見て制作は改善の方向に向かう少々の助けになっているように思われます。

美術予備校に来る殆どの生徒は当然ですが何かを極めているわけではないので精神的な鍛錬が足りません。知識や技術はすぐに指導できますしノウハウがあるので大したことではありません。大変なのは精神面の強化です。精神面の強化は上位層の生徒と問題がはっきりしすぎているボトム層の生徒の指導が楽です。難しいのはそこそこ良い子だけれども微妙に問題のある中間層の生徒です。場合によって中間層の生徒は問題の察知が遅れて指摘を逃れ、最終的に伸び悩んでしまう場合があります。

心療内科で心身症の認定を受けた人やカウンセリングを受けている人の中には美術の道に進むために勉強中の人もいます。心身症の治療をしている生徒の多くはボトム層に位置し、少しずつ情緒の安定をはかり、作品のレベルを上げています。ただ、理想としては心身症を治療中の人は治療が終わってから美術の勉強を始めることをお薦めします。焦らず、落ち着いて絵を描くことが大切なので、ゆっくり進めることが良いと思います。心身症の治療中に受験勉強をはじめること自体に、根底に強い焦りがあり、その思いが度々想起されること。そのことが情緒の安定の妨げになることがあります。

心身症を治療中の生徒やかつて治療していた生徒で指導が難しいケースがあります。それば騒乱につながる危険性がある場合です。
重度の心身症で治療されている生徒の場合、行動が攻撃的になる場合があります。攻撃の矛先は授業中の先生や生徒。自分自身に向かいます。授業中に叫び声を上げたり、先生に口答えをしたり、機材を投げたり、生徒の携帯や財布を手辺り次第に盗んだり、リストカットをしたり、実に様々な表現が示されます。生徒本人が美術の勉強をしたいという気持ちがあっても行動が攻撃的になる場合は生徒を受け入れることができません。生徒が大切にしなければならないことはアトリエの環境に上手く馴染んだり、慣れることです。そのためにはまず治療が優先です。

心身症にもいろんなものがあります。PTSDとADHDは心身症の代表的なものです。
PTSDは災害や虐待などで心の病を負ったストレス障害です。一方ADHDは攻撃的になったり、衝動的になったり、細かいことに注意がゆき届かない行動障害です。心身症の生徒の共通点は自分の障害を抑えることで一生懸命なので他人の問題行動を許容できないことです。PTSDの生徒は静かに制作をしたいと考えていることが多く、周りの生徒には騒がしくして欲しくないと考える傾向が強いようです。一方ADHDの生徒は落ち着きがなくじっとしていることができません。度々問題行動を起こします。心身症ではない生徒はADHDの生徒の問題行動を飲み込んでくれます。但し、PTSDの生徒は飲み込むことができずに騒乱に発展するかPTSDの生徒が限界がくれば不登校になります。
心身症には静と動があります。美術の勉強は心身症の治療に効果を発揮する面がありますが、学校には静と動を含めて様々な人がいます。その様々な人をひとまとめにしてその場の環境や人間を受け入れ、眼の前の状況に心が慣れることが美術の学校にしっかりと通って実力を身につけるためには不可欠です。

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