「低所得家庭の経済的な負のサイクル」
ハンディーを抱えた学生の抱える問題の1つに低所得家庭の問題があります。低所得の問題は美術の世界以外の社会にも見られます。美術以外の社会で最近では低所得者の家庭の教育の問題が取り上げられる機会が増え、ケーススタディーが少ないため情報の集まらない美術の世界とは違い参考になることが多く見つかります。美術の世界に限らなければ低所得者の家庭の子供が頑張って進学した話を耳にする機会は増えているように思います。地方から上京してレベルの高い大学を目指す人の中には自活をしながら大学に通う大学生がいます。保護者や学校の先生の一部からは学生がアルバイトをしながら勉強することを強く批判する声もありますが、低所得者の家庭に育った子供は社会に出た後、幾ら働いても所得が低いために生活がまったく豊かにならない負のサイクルに陥っています。負のサイクルから抜け出すには、「しっかりと勉強して良い大学を出てから社会に出るしかない」と考える学生も多く、反対される保護者や学校の先生がいらっしゃいますがクマビは1つの方法として間違ってはいないと考えます。他にも選択肢があることも確かです。しかし一番避けなければならないことは複数の選択に迷って何もできずに終わることです。失敗してしまうかもしれませんが、結婚して家庭を持つ前の短い期間に負のスパイラルから抜け出すチャンスを与えたいと考えます。興味のあることと出会い、子供が思い立った瞬間を機会と捉え、失敗を恐れずにチャレンジさせ、それを黙って見守ることも大人の大事な仕事だと思います。何しろ低所得者の家庭では失うものなど何もない場合が殆どです。 学生が自分の努力で生活を改善する手段の1つは「勉強して良い大学に行く」という方法です。露骨ですが、抽象的でなんだかわからない話しにしないために具体例を出して説明します。クマビの講師の小平は低所得者の家庭=いわゆる貧困層で育ちました。20年前に東京に来てから本当につい最近まで昼夜を問わず仕事をしてきましたが、仕事を通じて中上流層家庭では見る機会のない低所得者家庭の実態を数多く見てきました。低所得者家庭の親御さんの中には昼間に普通に働いて、家計を支えるために夜中にアルバイトをしている人が少なくありません。そういった親御さんが子供には自分のような負のサイクルから抜け出して欲しいと願うことは悪いことではないと考えます。子供自身もお金はないけれども一生懸命勉強して少しでも良い大学にいくために頑張ろうと考えることは悪いことではないはずです。もう少し具体的な例を上げると、小平が最近まで夜中に働いていた埼玉のある物流倉庫では夜中0時や2時に毎日100名を超える大人が集まってきます。毎日朝まで真夏や真冬でもクーラーのない部屋で重いものになれば30キロ近くある荷物を手で運んでいました。朝まで物流倉庫で働いて、朝から出勤します。夜帰宅して、夜出勤です。物流倉庫の面々は殆ど皆さん昼間は普通に働いています。1日の睡眠時間は2~4時間程度です。年代は20代の人から60代の人までおられます。皆さん文句1つ言わずに頑張っています。こういった人たちほど辛抱強く、自分に厳しく他人に優しい人です。少し余裕のある人ほど守りに入り、人に厳しくなるような気がします。低所得者家庭は場合によって何十年も寝る間のない生活を続けます。親の苦労している姿を見て、なんとか生活を豊かにしようと大学進学を考えることはクマビは間違いとは考えません。賛成しますし、本気なら応援します。勉強して美術系の良い大学に行くことは負のスパイラルから抜け出す確実な手立てとなります。