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デザインのススメ

石井 徹 (いしい とおる)

多摩美術大学
美術学部 デザイン科 グラフィックデザイン専攻卒

デザインのススメ

クマビのデザイン科で非常勤の講師をさせていただいている、石井と申します。

高校卒業後に1浪し、多摩美のグラフィックデザイン科を卒業して、マーケティング会社でグラフィックデザイナーを約10年、その後転職してインターネット銀行のウェブサイトのデザインや運営を、約20年経験しました。いまはフリーランスで活動をしています。

私が30年もの長い間、デザイン関係の仕事をしてこれたのは、美術大学に進学して、デザインやそれをとりまく文化に触れることができたからだと思っています。学業のみならず、全国からさまざまな人が集まる大学で、教授や同級生たちの多様な価値観に刺激を受けて、自分自身知らない可能性に気づいたりもできました。

今、この文を書きながら、デザイナーが不足している社会の現況を、少しでも改善できないものかと思っています。さまざまな仕事の現場でデザイナーが必要とされています。問題が立ちはだかるとき、その情報を整理し、視覚化し解決に導くキープレイヤーの一人としてのデザイナーが切に求められていると思います。

この話をはじめると、デザインとはなにか?デザイナーとはなにか?という定義にたち戻っていくことになります。私が社会人になりたての頃、デザインとは、意匠と言われることもあり、職人的な手工芸と解釈される向きも多かった気がします。しかし昨今では、デザインとは設計であり、問題解決であり、見た目の装飾というスタイリングだけではなく、物事の成り立ちの最初、根源の上流から関わる役割が理想、などと言われます。

また、システムをデザインする、人事制度をデザインする、組織をデザインする、というように、目的をもってなにかを作ろうとするときにはデザインという概念が必ずある、ということも理解されてきています。

コロナ禍で、さまざまな対策がなされています。座席を隔てるアクリル版の設置、フェイスシールド、感染者数の推移データのインフォグラフィックスなどに見られるように、社会の営みには、巧拙はあれども、デザインが欠かせない活動であることがわかります。

しかし、一方では、ファッション・トレンド、映画や音楽などのエンタメ的格好良さ、クールなスタイリングがデザインだという解釈もまだまだ多く、ある特殊な鋭いセンスを持った人が進む職業分野のように浅く解釈されていたりもします。

でも、これから日本の政治経済は、世界の潮流に巻き込まれながら、デジタルを推進し変革していくのは必然と言われており、しくみを変えるときには、設計としてのデザインなくては期待通りに機能を果たせません。デザイン経営ということも経済産業省 特許庁が宣言しています。詳しくは特許庁のホームページを読んでみてください。
https://www.jpo.go.jp/introduction/soshiki/design_keiei.html

このように、社会・経済がいっそうデザインを必要としている状況の中で、私自身はインターネット銀行という、デジタルの先端とも言える仕事の場に身をおきながら、より良い状況を作っていくことをやりきれませんでした。そうしたこともあり、フリーランスになった今現在、デザインを底上げするための裾野を広げる活動もしていければと、こうしてクマビをお手伝いしたり、文章を書いたりしています。

たとえば企業の中で、製品やサービスを使うお客さまや、その裏側で働くひとが、一緒に幸せになれるしくみ、デジタル技術の活用、わかりやすく美しい見た目と使用感などを、さまざまな関係する人たちと一緒になってつくっていく。そのために造形と意味や内容のバランスをとり、最適な解を導き出すのも、ひとつのデザインの醍醐味です。

一人のデザイナーだけでそれを成すのではなく、多様な才能を引っ張り出し、組み合わせて、世の中の環境やお客さまのニーズの変化に対応していく。そのためにチームでデザインするにも、造形もふくめたデザイン教育が重要になっています。

そういえば、つい先日「黒子のバスケ」というコミックスを読み終えたのですが、最終巻に描かれていたチーム全体でゾーンに入る究極のチームプレイには、まるで最近のデザイン思考の概念と同じような印象をもちました。

デザインは、「勉強や運動が不得意だけど絵を描くことを得意とする人」だけのものではありません。描くことは訓練で身につけることができます。造形技術と思考方法を学びながら、社会を構成する大事な役割としてのデザインの面白さに触れ、美術大学などを経て、これからの新しい世界を担っていく人が増えていくことを願っています。

これまで書いたことからご理解いただけるかもしれませんが、決して一人ではなく、仲間たちと協力して、社会や経済の複雑な問題を解決していくのが、これからのデザインとデザイナーに求められている役割。大切な最初の一歩を造形技術の習得とあわせて、少しでも一緒に学びあえたらと考えています。

複雑だから意外と面白い「デザインのススメ」、でした。

【職歴】
1. マーケティング会社のグラフィックデザイナー 1989-2000
株式会社ミクプランニングという会社にグラフィックデザイナーとして採用。クライアント企業のブランディング、広告宣伝、展示会・イベント、販促活動など、マーケティングを包括的に支援するためのグラフィックデザインに従事。

2. インターネット銀行のデザインやWebサイト運営 2000-2021
ソニー株式会社のインターネット銀行立ち上げに伴うデザイナー募集に応募し準備室に採用され銀行設立後に転籍。ウェブサイト、企業案内、各種コンテンツ制作。 その他様々な業務を経験。

3. 2021年4月よりフリーランス。

【趣味・その他】
大学では主にイラストレーション、広告デザインを中心に学習。卒業後実務を通して、タイポグラフィや写真を学ぶ。2002年に銀行ウェブサイトでグッドデザイン賞受賞。趣味はオイルペインティング、自転車、音楽鑑賞など。
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